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韻踏み夫による日本語ラップブログ

日本語ラップについて Twitter @rhyminaiueo

SEEDAについて誰もが知っている二、三の事柄 あるいは語り草の束

※この文章は「SEEDA入門」といったものとしても、ましてや「SEEDA論」としても、「SEEDAを通して見る日本語ラップの歴史」としても、「日本語ラップ入門」としても読まれることを望まない。また、このような文章の書き手が私である必然性が皆無であり、むしろ日本語ラップにまったく日本語ラップに詳しくない私よりも、ただ日本語ラップに詳しいだけの多くの人たちにこそ書いてほしい文章であった。なぜなら、この手の文章は一切考えることを必要としないものであるから。したがって、日本語ラップに詳しいだけの人には、この文章の補足や、誤りの訂正をお願いしたい。本来の書き手となるべきはあなたたちであったはずだから。また、この文章の読み手は本来存在してはならない。なぜなら、題にあるようにこの文章に書いてあることは「誰もが知っている事柄」を記しただけであるから、常に(ということはむろん、既に)、誰もが知っていなければならない事柄だからである。以上のような、多くの矛盾を抱えているにも関わらず、私は文章を書いた。また、常識的なことを記述するだけと言いながら時に非常に主観的な記述があると言う点もこの文章が抱える矛盾の一つである。しかし、それも必要であると判断し、採用した方法である。であるから「SEEDA論」ではないのだ、と繰り返し断っておく。また、この文章には本筋から脱線した余談が数多く含まれてもいる。それらも全ては日本語ラップの聞き手に共有されるべきことを、きわめて貧弱である私の知識を通じて少しでも記しておきたいと思ったからである。特にこの部分においてこそ、日本語ラップに詳しいだけの人たちの助力を仰ぎたい点である。だから「SEEDAを通して見る日本語ラップの歴史」ではないのだ、と繰り返し断っておく。この文章は二つのもので構成されている。情報の列挙と筆者のふとした想起や思い付きである。しかし、資料的な価値はなく、また面白みもない文章である。非常に不十分であり、中途半端であり、矛盾を多く抱えたものであるが、それでもこの文章は必要だと思った。

 

 

 

SEEDAの代表的なアルバムを紹介していきたいと思います。

『GREEN』 2005年

このアルバムはSEEDAがいかに当時異端であったかを思わせてくれます。聞いてみればわかるように、超高速フロウのバイリンガルラップを、多少の乱れやビートとのズレも構わずに叩き付けています。若き日のSEEDAがいかに、日本語ラップという枠を飛び出て、世界へということを夢見ていたかが感じられる作品です。特に注目されたのがフロウで、SEEDA日本語ラップのフロウを新たな次元に引き上げたのだと言えます。このアルバムの前作『ILLVIBES』でも、彼はこのアルバムと同じスタイルでラップをしています。また、彼は2003年、B-BOY PARKのMCバトルに出場しており、YOUTUBEでその様子を見ることができますが、その時点で、この『Green』のスタイルが出来ていたことが分かります。しかし、SEEDAの新しいラップは観客や審査員に十分に理解されていたのか、疑問が残ります。しかしまた同時に、理解されなかったであろう理由もまた理解できます。

早口ラップは、何もSEEDAの特権ではありません。2000年代の初頭から半ばの時期には多かったラップのスタイルです。DABO「レクサスグッチ」、LITTLE「MC~殺人マイクを持つ男~」などがありましたし、また当時のアンダーグラウンドの雄としてMSC(ILL BROS)「新宿アンダーグラウンド・エリア」、メジャーではSOUL'd OUTの「ウェカピポ」をはじめとするヒットがあり、2004年にはTOKONA-X「I'm in Charge」など、早口ラップは当時の流行の一つだったと言えます(あるいは、一般的にはラップとは早口なもの、と思われていたようでもあります)。早口にはいくつかの機能がありますが、その一つにスキルの誇示があるかと思われます。それは特殊技能であって、とても分かりやすく人を圧倒でき、であるがゆえに浅薄であるともいえるのですが、そのようなものでした。1997年に発売されたBY PHAR THE DOPESTKREVAとCUE ZEROのユニット)のシングル『切り札のカード』のB面「伝道師」(ヴァージョンは違いますがアルバム『BY PHAR THE DOPEST』の隠しトラックとしてアウトロにも収録されており、こちらの方がオリジナルよりもスピード感が感じられます)のKREVAの有名なヴァースも当時としては非常に先鋭的な早口フロウを取り入れており、超絶スキルの持ち手としてシーンを騒がせたようです(2011年「基準」の早口が有名ですが、そもそもKREVAはデビュー当時からこの手の早口で周りを黙らせる、ということをしてきたようです)。早口は計測可能であるがゆえに、どんなに耳が悪い人間でも、そのいかんともしがたい物量には、平服せざるをえない、そのようなものです。事実、EMINEMの「RAP GOD」はギネス記録に認定されました。

ちなみに、EMINEMはアメリカの白人ラッパーで、世界で最も有名なラッパーの一人です。元N.W.Aで、西海岸の大物であるDr.DREのフックアップを受け、過激なラップと、卓越したスキルで鮮烈にデビューしました。「MY NAME IS」「STAN feat. Dido」「LOSE YOURSELF」「 Love The Way You Lie feat. Rihanna」などは世界的にとても有名な曲です。

SEEDAはこのような早口ラップの流れに位置していた、と言うことが出来ると思います。もちろん、その圧倒的な速度の中に、独自の強弱、独自の響き、独自の発声などがあったことは言うまでもないことですが。おそらく、SEEDAは速さの中にエモさを取り入れることができた数少ないラッパーであった、ということが出来るのではないでしょうか。速さという量的なものの中に、質的なもの(声の独自の魅力的な響きで、SEEDAの声には主に苦しみの音色が感じられると思います)を取り入れるには、より一段上のスキルが必要であると思われます。ちなみに、高速ラップの系譜を受け継いでいるのはその超絶スキルをSEEDAからも絶賛されたJinmenusagiであろうと思われます。

また、この時期のSEEDAバイリンガルラップの系譜にも連なっています。バイリンガルラップの定義は非常に曖昧かと思われますが、例えばその代表者にSHING02がいますし(彼は英語のみの曲と日本語のみの曲、という風にスタイルを分けていますが)、また、現在飛ぶ鳥を落とす勢いのKID FRESINOもその一人だと言えます。SHING02はクラシック『緑黄色人種』、KID FRESINOはFla$h BackSのメンバーでグループでは『FL$8KS』、ソロでは『Horseman's Sckeme』、名古屋SLUM RCのメンバーC.O.S.Aとのユニットでの『Somewhere』などの作品があります。現在ではバイリンガルラップという括りはほぼ無意味なものとなっていますが、2000年代初頭から半ばのこの時期、バイリンガルラップは大きな問題の一つでありました。なぜなら、日本人が日本語でラップをすることに、いまだ大きなコンプレックス、引け目を抱えており、日本語ラップというジャンルのアイデンティティが確立していない時期であったからです。英語でラップをすると、「日本語」ラップのアイデンティティが失われるのではないか、という危惧があったのです。例えば、K DUB SHINEの「JAPANESE HIPHOPじゃねえのかよ」、「英語ばっか使う無国籍ラップ 日本語に心動くべきだ」(キングギドラ公開処刑」)というラインがバイリンガル批判の代表でしょう。そんな中、バイリンガルスタイルを選択したSEEDAの狙いは、おそらくのちの「日本語ラップぶっちゃけ興味もないわ」という一節に示されているように、日本を超えて世界へ、という大きな野望に裏付けられていたと思われます。実際にSEEDAは、世界で戦いたい、という望みを強く持っていることをインタビューでたびたび打ち明けていますし、英語のみで歌われた楽曲もあります。

また、この作品は高速フロウの系譜、バイリンガルラップの系譜に加え、ハスリングラップの系譜にも連なります。ハスリングラップとは、ハスラーのラップです。ハスラーとは、ここでは主にドラッグディーラ―のことを指します。アメリカでは、ハスラーを経験したラッパーは数多くいます。NASJAY-Zはその代表格でしょう。また、HIPHOPの思想に多大なる影響を与えたマルコムXハスラーとして成り上がった一人です。このように、ハスラーはアメリカのHIPHOPと切っても切り離せないものなのですが、日本でハスラーの経験があるラッパーが登場したということだけでも、大きな驚きでした。不良系のラップの親元と言ってよいZeebraは、チーマー、ヤンキーというきわめて純日本的な文化を刺激したとはいえ、ハスラーとそれらの層は似て非なるものです。不良が日本のガラパゴスな文化だとすれば、ハスラーHIPHOPそのものと密接な関係があります。ハスラーはただ不良よりも違法性が高く、本物の悪だから良いというのではもちろんありません。ハスラーであることが一つの特権性となるのには、いくつかの理由があるかと思われますが、ハスラーは貧困と成り上がりの物語を通じて、資本主義の核心に触れているということが挙げられると思われます。そこから、ハスリングラップに特有のリリックにおける特徴が浮かび上がってきます。その特徴を挙げておきたいと思います。彼らは麻薬、欲望、金、嘘といったものの近くにいることができる/いなければなりません。そして、それらは全てハスリングラップにおいて、非常によく似た運動を見せます。その運動は、いくつかのハスリングラップに特有の主題や構造を見れば証明されると思います。暴走と反転という二つの運動が最も大きなものではないでしょうか。金が暴走すること、人間関係が暴走すること、薬物中毒が暴走すること、などです。交換という手続きを踏み飛ばした収奪による一攫千金、コミュニケーションの破綻や不可能性に突き動かされた殺人、身体と精神の破綻としてのオーヴァードーズです。また、反転とは、買い手が売り手に、売人が中毒者に、仲間が敵に、といったもので、「明日は我が身」「勘繰り」といった言葉に集約されると思います。また、ハスリングラップの先駆として2002年THA BLUE HERB「路上」があり、そこでは「人違い」という言葉で「反転」と私が呼ぶものが表現されており、ハスラーの物語がフィクションとして神話的な暗示、因果を交えて語られています。この曲で歌われた、しがないハスラーの生活は、SEEDAの内省的なハスラーラップと評されるスタイルに直接の影響があるのかもしれません。また、妄走族「まむし―CHOICE THE GAME― feat. D.O」はドラッグディールの話ではありませんが、「路上」と似た面を持った曲であると言えます。ちなみに、ハスリングラップの担い手は他にMSC、D.Oなどがその筆頭に挙げられます。D.Oは「悪党の詩」「I'm Back」などの代表曲があります。

 以上のように『Green』は、高速フロウ、バイリンガルラップ、ハスリングラップという、それぞれ技術的、言語・文化的、経済・社会的な系譜のそれぞれ最先端に位置付けることができるでしょう。そのためきわめて重要な作品ではあります。しかし実はこのアルバムは、傑作であるということはできません。言ってしまえば、若く青臭い作品という印象を、後のアルバムと比較した場合、与えてしまうことは否めないのです。USのラップを多く聞いてきて、英語も自在に使え、ハスラーをやってきたという、ラッパーとしての準備は万全であった彼はしかし、それをいまだ上手く形に落とし込むことに成功しているとは言えないのです。高速フロウは、世界という大きな舞台を見据えて生き急ぐ彼の焦りと似ているように思えても来ます。むろん、全編通して聞くべきであり、聞かねばならない名盤の一つです。「Back In Da Days ft.ESSENCIAL」「LIFE feat. L-VOKAL」など多くの傑作があります。しかし、やはりこれは失敗作、素晴らしき失敗作であることには間違いなく、それを証拠立てているのが「Path feat. MANNY of SCARS&BES of SWANKY SWIPE」です。ここでもSEEDAは相変わらず、高速で、エモい(エモーショナルな。今はあまり使われませんが、よく使われた言葉です)、バイリンガル風のラップで、ハスラーの心情を繊細に描いています。しかし、何といっても客演で参加しているBESと比較してみるとSEEDAの現時点での敗北が明らかなのです。SEEDAのラップを聞く限りでは、この曲のビートの上でラップがきわめて駆け足で、焦りながらさまよっているという印象を受けます。言葉を多く詰め込むSEEDAのフロウは、確かにビートへの繊細な、微視的な耳を要するのかもしれませんが、ビートを捉える、ビートをラップで制御する、というようなことはいまだできていないのです。反対にBESはただの一言目で、SEEDAがつかみ損ねたこのビートを完全に我が物にしてしまっています。聞いてみてください。「結局 MONEY,PAIN切れないチェーン」とBESは歌い始めます。BESのフロウとしか言い表せないあのフロウで、余裕たっぷりに、第一行目で、ビートとラップが完璧な仕方で結びついています。さらに言えば「結局」の一語を聞いた時点で、BESのヴァースの成否は決定されたと言っても過言ではないと思います。その後、三度繰り返されるこのラインが、歌詞の中にある種々のイメージと密接に連鎖しながら、日本語ラップ史上最高に美しく、圧倒的なヴァースを歌い上げることについては、ここでは語り切れません。正直に言って、私はこの曲から、無残なまでにSEEDAが敗北している、という印象を受けました。この作品はSEEDAに、前作『ILLVIBES』から続く早口のスタイルが限界に来たことをSEEDAに教えたのではないでしょうか。この時のフロウは当時の日本語ラップにとって一つの衝撃であったろうこと、あるいは衝撃を与えられると信じた若きSEEDAの志は理解できます。しかし、それでは足りないのです。BESのあの見事な、完璧な、余裕たっぷりの、あの美しいヴァースを聞けばそれが分かるのではないでしょうか。しかし、とにかくこの作品はあまりに偉大な失敗作であるのです。そのことは次作が証明しています。

 BESのことも紹介しておきます。これから何度も名前が出てきます。SEEDAが所属するグループ、SCARSのメンバーで、またSWANKY SWIPEというグループも結成しています。日本でラップスキルのランキングを作るとしたら、おそらくSEEDAと一位の座を争うことになるのは、BESということになるかと思われます。彼は疑いもなく天才で、誰にもまねできない、どのようにして開発されたのかまったく分からない奇跡のフロウの持ち主で、並外れたリズム感を持っていて、リリックも非常に高度です。ここまで説明したなら、すでにお気づきのことと思いますが、SCARSには日本で最もラップの上手いラッパーが二人もいるのです。恐ろしいですね(もちろん、他のSCARSのメンバーもみな素晴らしいですが、ここでは紹介できません)。BESの代表的な作品はBES from SWANKY SWIPE『REBUILD』、SWANKY SWIPE『BUNKS MARMARED』で、この二枚のアルバムは大傑作なのですべて聞いていなければなりません。曲単位で言えば、「HOW HOW HIGH feat. メシアThe Fly」「The Process」「かんぐり大作戦」「JOINT feat. メシアThe Fly」「評決のとき」などは歴史に残る名曲で、有名な曲なので聞いていなければなりません。

 

SCARS 『THE ALBUM』 2006年

SCARSは、リーダーA-THUGを中心に、SEEDA、BES、STICKY、MANNY、林鷹(GANGSTA TAKA)、BAY4Kというラッパーたち、またビートメイカーにI-DeA、SACが所属するグループです。彼らは神奈川県川崎市を拠点とするハスリンググループを基にして結成されました。SCARSは日本語ラップにおける大所帯クルーの系譜に位置します。日本においてHIPHOPクルーという意味ではじめに位置するのは雷家族、その弟分とも言うべきNITRO MICROPHONE UNDERGROUND、さらに78年組を代表するものと言えば般若が所属していた妄走族、MC漢が率いるMSC、厳密にクルーとは言えませんがD.Oの練マザファッカー(ちなみにSCARSのBAY4Kはこちらに属していました)があります。また、SCARSと同世代で、SCARSとの盟友関係にあると言ってもよい、NORIKIYOが率いるSD JUNKSTAもあります。他にも田我流などのstillichimiya、OMSBなどのSIMI LABなどがおり、現在シーンを賑わしているBAD HOP、YENTOWN、KANDY TOWNなどにそれは引き継がれています。

 さて、このアルバムは日本語ラップの歴史上、最も優れた作品です。傑作中の傑作であり、絶対に聞くべきで、聞いていないことは許されない、と言いたいところですが、なんと、この大傑作が現在、廃盤状態なのです。むろん、iTUNESにも入っていません。中古で探すしかないようです。本当に日本語ラップ史上最高傑作だと言っても過言ではない、紛れもない超名盤なのですが、こんな作品が廃盤であるとは、日本語ラップにとって実に悲しむべきことなのです。いくつかの楽曲は幸いなことに今動画サイトに上がっているようなので、そちらを是非とも聞いておくべきです。

このアルバムは、日本語ラップシーンに、スキル、リリック、リアルなどの面で大きな衝撃を与えました。ハスラーの個人的な事柄を率直に、かつ独自の言語的センスで歌うことは、リアルと言うことを考えるうえで重要な革新でありました。おおざっぱにまとめますが、彼らの上の世代、さんピン世代のトポスが「現場」という言葉に代表されるとすれば、SCARSらにとって重要なトポスは「ストリート」である、と言えそうです。ストリートのリアルということでは、さんピン世代のZeebraは「俺は東京生まれ HIPHOP育ち 悪そうな奴は大体友達/悪そうな奴と大体同じ 裏の道歩き見てきたこの街」という有名なパンチラインを残しています。しかし「裏の道」を知っていることを歌いますが、その裏の道がどのようなものであるのか、それを歌ってはいません。リアルである、ということを歌えど、リアルを生きることはなかったと言えるのではないでしょうか(もちろんそれが悪いとは言いませんし、Zeebraがリアルでないとも言っていません)。ちなみに「リアル」についてSCARSのほかに重要なのはMC漢及びMSCでした。ベストセラーとなった漢の自伝『ヒップホップ・ドリーム』の中に書かれている、リアルを守るための有言実行ルールは大きな話題となりました。

ラップ自体について言えば、SEEDAは『Green』から各段の進歩を遂げています。これまでのファストフロウは、ともすれば単調なものであったと言えるかと思いますが、ここでは、ビートへの完璧なアプローチと、かつ多彩で独創的なフロウの数々が披露されています。SEEDAが真にSEEDAとなった、と言えるでしょう。

 また、言うまでもなくこのアルバムはSEEDAだけではなく、メンバー全員のラップが素晴らしく、スキルでぶっちぎるもの、リアルを描くもの、規格外のパンチラインを放つもの、狡猾な悪を演じるもの、苦しみを吐露するもの、仲間について歌うものなど多様であります。

 ちなみに、以下に張り付けた対談では、当時の日本語ラップにどれほどSCARSが衝撃を与えたのかが、リアルタイムでそれを体験した人物によって語られていて、とても勉強になると思います。

第17回 ─ シーンの風向きを変えたワルいやつら~SCARS『THE ALBUM』 - TOWER RECORDS ONLINE

 

『花と雨』 2006年

SEEDA出世作であり、誰もが認めるクラシックアルバムとして認知されています。日本語ラップヘッズは全員「花と雨」の歌詞を暗記しています。そして日本語ラップヘズならばライブでこの曲のイントロが流れた瞬間に突っ立ってはいられなくなります。まさに名曲中の名曲で、おそらく日本語ラップクラシック曲ベスト5を作ったとしたら、確実にランクインするだろうと思われます。「花と雨」について、私は『ユリイカ 特集*日本語ラップ』に寄稿した「ライマーズ・ディライト」という文章の中で書きましたのでここでは触れません。ただ、リリックの表面における言葉の運動が奇跡を起こした、ということだけを言っておきます。この曲で起きていることは奇跡だと私は思っています。この曲の最も有名なパンチラインは「長くつぼんだ彼岸花が咲き空が代わりに涙流した日 2002年9月3日俺にとってはまだ昨日のようだ」です。とても感動的かつリリカルで、日本語ラップ史上に残るとてもとても有名な歌詞です。

表題作以外にも聞いていなければならない曲がたくさんあります。「不定職者」、「Sai bai man feat. OKI」はともにSEEDAのライブでも定番の曲で、この曲も誰もが知っています。「不定職者」は、ハスラーの生き様をユーモラスに描いた傑作です。「不定職者」という言葉には、ハスラーを悪自慢としてではなく、自己相対化して見つめる、というSEEDAに特有のスタンスが現れています。「Sai bai man feat. OKI」は栽培の歌です。何を栽培するのかと言えば大麻の栽培で、ガーデニングの歌ではありません。ストリートで生きる彼だからこそ書けるリリックで、イリーガルな話題をユーモラスに、かつ細部に渡って描き切っています。「学がなきゃ無理さURBAN FARMER」と歌うように、「ホルモンバランス」を保ち、はさみで汚れた葉っぱを切り落とすといったことなどを歌っています。また、「おっと服に枝が付いてる」というラインは、後にまた登場するのですが、とても有名です。

また、一曲目に収録されている「ADRENALINE」も完璧な一曲で、「UNDERGROUND OVERGROUND誰もが ラッパーSEEDA否定した頃から/クローゼットブースの中から吐いた言霊 FUCK世の中BUT FUCK SEEDA」という歌いだしの鮮烈さにまず驚きます。前作の失敗を踏まえ、いまだ「世の中」への苛立ちを抱きながら、しかし、ビートへのアプローチとリリックの一語一語に磨きをかけたことなど、すべてをこの一節が物語っています。

続く二曲目の「TOKYO」では、ビートのすべての音を聞いているかのように、ビートとラップが完全な結合を見せながら、東京のストリートを描写しています。特に「BMの覆面近所を回るもママチャリのババア昼間すれ違う/無人交番ゲリラするライター 道路脇ただ置かれた花束」という一節は数ある日本語ラップのストリート描写の中でも屈指の出来だと思います。視点変換、運動と静止など語りの面で非常に高度な技術を用いつつ、ストリートの表と裏を描写しきっています。他には「目に映るもの全てを詩に落としたら誰もここじゃ生きれないだろ」「尊敬できるヤクザに会えばワルとカタギの違い分かるはずだ/尊敬できるラッパーに会えば自ずとHIPHOPが分かるはずさ」などのパンチラインはとても有名です。

ちなみに、描写ということはリアルと深い関係があります。そもそもラップで描写を行うことは非常に難しいであろうと思われますし、稀なことでもあります。描写を行う数少ないアーティストがSEEDAであると言えます。描写を行うアーティストにはTHA BLUE HERBもいますが、特にリリックの面でSEEDAに多大な影響を与えたと言えます。BOSSとSEEDAは描写と隠喩をリリックにおいて行う数少ないアーティストですが、思うに、描写と詩的な意味での隠喩(意味に還元されないイメージの閃き)はラップのリリックに希少なもので、ラップにおいてこの二つの間には大きな関係があるのではないでしょうか。隠喩の話は置いて、他に描写を行うアーティストには、MC漢がいると思われます。例えば、「クルーの麻暴が手にした道具は空のビール瓶 何にも知らずに笑顔でやってきたイラン人の額めがけてタイミングよく振る渾身のフルスイング」(「新宿アンダーグラウンド・エリア」)という有名なパンチラインがありますが、これもラップに数少ない描写で、生々しく過激な光景を描いています。他には般若「理由」の冒頭、「三日月が傾く 風が荒ぶる 電信柱の影だけ長く/破れた袋が地面を跨ぐ 寝れねえカラスが歌ってやがる」という一節は描写と押韻が組み合わされたきわめて完成度の高いラインです。最近の例で言えば、「今夜俺は歩いて帰れるだけの酒を飲み 潰れたFriendsを跨いで振り返る/片側だけライトが灯るクラブの明け方のノリを遠くから眺める」(C.O.S.A×KID FRESINO「LOVE」)という最近有名になった一節は上の例と多少異なりますが、語り手の身振りを交えながらある情景を描いているという点でこれらの系譜に位置付けることが出来ると思われます。そもそも、ラップという表現形式においてはほとんどの言葉は、散文で言う地の文とはなりがたいということにこの問題の根っこがあると思いますが、ここも研究を要するところでしょう。

また、他に聞いてほしいのは「ILL WHEELS feat. BES」です。二人が日本で最もラップの上手い人だということはすでに述べました。その二人がスキルを存分に見せつけながら、ワックMCへのディスを次々と放っていきます。「リリックの中二度生きるラッパー 言葉の壁は高いがフロウはその上を超すことは可能さ」というSEEDAパンチラインも有名です。BESの「千鳥足でも読めるフロウとライミング」、「ビーツとライムが水と油」という歌詞は、とても洒落たディスのセンスで素晴らしいですし、また、ビートとラップの乖離をディスするということから、反対にSEEDAやBESがいかにビートに対するアプローチの点にいかにこだわっているかが分かります。また、この曲の終盤に行われる二人の掛け合いは圧巻です。矢継ぎ早に、日本屈指の二人のラッパーがスイッチを繰り返しながら、一息に言葉を吐き出し、最後に彼ら二人こそが「真のフロウ巧者」なのだと言い切る瞬間には、なんともいえない快感が襲います。「どうのこうの言ったってしょうがない 結局ラップが上手すぎてしょうがない」。本当にしょうがないくらいにラップが上手すぎるのです。

ちなみに、ワックMCをディスする曲の系譜は膨大なものがあります。キングギドラ「大掃除」をはじめ、ほとんどのラッパーがといってよいほどこの手の曲を出しており、枚挙にいとまがありません。おそらく、シーンの中心に躍り出るために、ワックMCディス曲が要請されるのではないでしょうか。他人をディスすることと、自らの価値を主張することは表裏一体だからです。比較的最近の例を挙げておけばKOHH「FUCK SWAG」、「Life Style」のT-PABLOWのパンチライン「お前らのHIPHOPは習い事 HIPHOPってのは人生だから一緒にすんなよまがいもの」というものが代表的でしょうか。 

ここで、前作『Green』との決定的な違いを説明しておきましょう。よく言われるのは、前作は速すぎて上手く言葉が聞き取れず、『花と雨』は日本語がとてもよく聞こえる、というものです。しかし、速度はまったく表面的なものでしかないと思います。重要なのはラップの質自体の、劇的な向上だと思います。上でリンクを貼った、「 サ イ プ レ ス 上 野 の LEGEND オブ 日 本 語 ラップ 伝 説」の別の回、第19回NORIKIYO『EXIT』の回では次のようなやり取りがあります。

 

上野「で、トラックもらって、ラップ乗せてミックスして……みたいな流れで全部作っちゃってる人は多いじゃないですか。ラップとビートが水と油みたいに分離したままのアルバムなんてめちゃくちゃあると思うし。でもキー君はそうじゃない」

ブロンクス「そこがキー君とかSEEDA君の世代がエポックメイキングだった理由なんじゃないかと思うよ。これはSEEDA君が言ってたんだけど、まずトラックを聴いて、足りない音程をラップで埋めると」

上野「おお~……すげえなあ。昔だと、〈歌詞先〉とか普通にあったと思うんですよ。でも、いまはあらかじめ曲を聴いて〈これだったらこういう感じがハマるなあ〉って作っていく。そうしないと全部書き直しになっちゃいますからね。だから、いまもMIC大将とかが、俺とやる予定の曲を勝手に自分のなかでビートを決めて考えてるらしくて〈大丈夫なのか?〉って思うんですけど(笑)」

第19回 ─ 悪運の尽きたリリシストのスタート地点~NORIKIYO『EXIT』(2) - TOWER RECORDS ONLINE

 

 

素晴らしい証言を残してくれたものです。何と素敵な話なのでしょうか。トラックに「足りない音程をラップで埋める」。トラックがまず先にあり、ラップは後に来るのです。歌うことよりもまず聞くことが先にあるのです。本当に衝撃的ですし、美しい話です。実際にSEEDAのラップを聞いてみれば、この言葉が嘘ではないことが分かるはずです。『Green』において欠けていたのはこの点なのではないでしょうか。つまり、自らの言葉を物凄い速度で吐き出していくのではなく、まずはビートがはじめにあるのです。それは「心に書き留めたフリースタイル」(「MIC STORY」、後に紹介します)の絶対性を放棄し、ビートという他者に、世界に、自己を開くという行為だと言えるのではないでしょうか。そして、この試みが見事に成功したのが『花と雨』であると言えます。

 

『街風』 2007年

傑作『花と雨』に続くこの作品は、SEEDAのアルバム中最も売れた作品であったようです。SEEDAはレコーディングの制作方法に大きな不満を持っていたようで、このアルバムを気に入っていないと言ったりしていましたが、SEEDAが何と言おうと良いアルバムであることには違いありません。何といってもこのアルバムは客演陣が豪華です。アルバムとして見れば、前作に比べてまとまりを欠いていますが、曲単位では素晴らしいものがたくさん詰まっています。

THA BLUE HERBのILL-BOSTINO(Tha BOSS)を招いた「MIC STORY」は有名な曲です。ブルーハーブは、東京中心主義であった日本語ラップ界に、北海道から独力で立ち向かい、地方をレペゼンすることの大切さを教えてくれた素晴らしいアーティストです。THA BLUE HERBの『 STILLING, STILL, DREAMING』というファーストアルバムは、クラシックだと認められており、とても評価の高いアルバムです。歌詞の多くが抽象的ですが高度で、日本語ラップの歌詞のレベルを引き上げたと言えるのではないでしょうか。また、この作品によって、さんピンCAMP組のラッパーから次の世代、地方レペゼンを旨としていた「78年式」のラッパーたち、またとても豊かであった2000年代初頭のアンダーグラウンドシーンなど、新たな時代が切り開かれました。

 この「MIC STORY」という曲はマイク一本で生きていくラッパーの覚悟を、先輩と若手がそれぞれ歌う、という構造になっています。ストリートを突っ走って生きてきたSEEDAはこれまで、ハスラーの経験を歌ってきましたが、自分はこの後どうすればよいのかと、街の真ん中に立ち止まって悩んでしまいます。「街中がHUSTLIN' ALL DAY 気付けば一人待ちぼうけ」。金を稼がねばと焦り、早くラップスターになろうと野心を燃やすSEEDAに対して、ILL-BOSTINOは「上がりっぱなじゃ生きてはいけねえ」、「恐れを知らないあのどん底から俺は家康さながら生き残った」と、しぶとく生きることを教えます。そしてSEEDAは徐々に何かを悟りだします。「光を知らない石ころは光を知って己を知る」「足蹴にのけ者ヘイター全てはありがとうここまで来れたから」といった素晴らしいパンチラインを残しています。ちなみに、この曲でBOSSは「その仕事俺にくれ あれから何年」と歌っていますが、おそらくこれは自身の「ILL BEATNIK」という曲の一節を意識してもいるでしょう。1999年に発売されたアルバムで絶大な評価を得た彼らは、2000年、ヒップホップアーティストとしては珍しく、FUJI ROCK FESTIVALに出演します。そこでこの「ILL BEATNIK」のライブをしたのですが、このライブは伝説とされており、圧倒的なパフォーマンスで観客を完全にロックしています。この映像は現在も動画サイトで見れます。

また、客演陣の中で一際目を引くのはKREVAです。ストリートの不良でアングラな存在であったSEEDAと、すでに紅白歌合戦に出場し、オリコン一位を取っているメジャーなアーティストであるKREVAが共演したからです。その曲が「TECHNIC」です。この曲もとても有名で、傑作だと認知されています。KREVA製の素晴らしいビート上で、アンダー/オーバーの垣根を超え、二人の屈指のスキルを持つラッパーが格好いいラップをかましています。SEEDAは「正規で300 自主で5000って何」と、現状の音楽業界に対する不信を表明するパンチラインを残しており、インディペンデントに自らの音楽で金を稼ぐというライフスタイルを体現します(このアルバムはメジャーから出ているのですが)。この姿勢は日本語ラップに与えたSEEDAの大きな影響の一つではないでしょうか。ちなみに、日本語ラップバブルがはじけた後のこの時期、多くのラッパーがメジャーの幻想を捨てた時期だったのではないでしょうか。二枚のアルバムをポニーキャニオンから出した般若は後に「ポニキャに彩ちゃん 居ると思ったら居ねーよ あらま」(「履歴書」)と自虐的に歌っていますし、OZROSAURUSのMACCHOもポニーキャニオンでのアルバム制作時に歌詞の規制が厳しかったことに激しく怒り「言葉の羽もぐメジャーよりインディーズ」(「SANDER」)、「045styleからAREA AREA ROLLIN'じゃ小銭さ俺の手には/メジャーって何だかいけすかねーな それとも仲間が搾取?Blah」(「PROFLILE」)とディスをしていますし、「勘繰るぐれえならハマに帰ろう」(同前)とインディーズに移行しました。「TECHNIC」に話を戻しますが、何といってもKREVAのラップがキレキレで、珍しく本気のKREVAが見れる曲の一つです。二人はそれぞれの立場から「東京の流れ」を見つめ、その目まぐるしさよりも速くラップをし、「振り返らず」に「人生のTRACK」をラップで疾走します。また、補足しておけば、この曲のKREVAのヴァースは、OZROZAURUSのMACCHOから受けたディス(「DISRESPECT 4 U」)へのアンサーにもなっています。「ロナウジーニョばりノールック 音が口を塞いでまた静かに報復」という、KREVAらしい比喩のセンスと、いつものKREVAらしくない抽象的な表現が混じり合ったパンチラインはとても有名です。ちなみに、OZROZAURUSは横浜をレペゼンするグループで、ハマの大怪獣として君臨し、日本中に「045」ナンバーを知らしめました。名曲中の名曲「AREA AREA」をはじめ、「ROLLIN' 045」「Hey Girl feat. CORN HEAD」「My Dear Son」「Juice」「証拠」などの曲があります。

他にも四街道ネイチャーを招いた「ガリガリBOYS」、D.O客演の「NO PAIN, NO GAIN」、アメリカの有名ラッパーSMIF-N-WESSUNを招いた「LOVE&HATE」、仙人掌とストリート描写の妙を見せる「山手通り」、音楽のすばらしさを美しいトラックに乗せて歌った「MUSIC」、「不定職者」のリミックスである「また不定職者 feat. BES, 漢」など、傑作がたくさん収録されています。豪華な客演陣と、SEEDAの出会いによって楽しめる一枚であることには間違いがありません。

 

『HEAVEN』 2008年

『街風』の次に発表されたこのアルバムは、大傑作『花と雨』と同等、あるいはそれ以上との評価を得ているクラシックアルバムです。シーンへの衝撃、と言う点では『花と雨』に劣るかもしれませんが、完成度で見るならばこのアルバムは負けていません。ビートメイカーに、BACH LOGICとI-DeAという世界レベルの二人を招き、その素晴らしいビートの上で、進化したSEEDAのラップを聞かせてくれます。

「自由の詩 feat. A-THUG」は、これまでの自らの評価、張られたレッテルから逃れようとする意志に満ち溢れており、SCARSのリーダーA-THUGと完璧なコンビネーションを見せています。いつも通りのラップスキルを見せつけていますが、「目の前の俺をよく見てくれ天才などでも何でもねえ/BACH LOGIC I-D Green 花と雨 一言だけ詩(うた、引用者)は俺のままだぜ」と、ファンの望むSEEDA像に囚われないことを宣言しています。同時にストリートからの脱出も目指していて「借金足枷 can't get out ダチが皆ハスラーならcan't get out」と歌っています。また、A-THUGも良いヴァースを蹴っており、「冷めない内に飲んどけスープ 冷めない内にやっとけラップ」「万券貯めて千円使いな/九時から六時でも金を稼ぎな」といった(意味不明で?)強烈なパンチラインを残しています。この曲は「ILL WHEELS」同様、最後のヴァースでの二人の見事な掛け合いが見どころの一つで、SEEDAが最後に吐き捨てる「oh shit we get that 人に使われると反吐が出んだBlah!」というラインは最高に格好いいです。

このアルバム中、最も人を驚かせるのは「Homeboy Dopeboy」でしょう。ビートは非常にイレギュラーで、乗せるのが難しいはずなのですが、SEEDAはこのビートを完全に乗りこなし、鋭いラップとリリックを披露し、聞く人を戦慄させます。二分ほどの短い曲ですが、SEEDAお得意の早口に、聞きやすさが加わり、素晴らしい歌詞を歌っている素晴らしい一曲です。歌っている内容もきわめて高度で、麻薬、金、欲望といったものの危うさがその内容です。「やれば嫌いなやつはいない だって俺もお前も人間だろ」。ドラッグ、性、金といったテーマが複雑に絡み合いながら、鋭いラップが披露されています。その中でも面白いのは「電車は無理だよ鼻水でるもん 仕事中鼻血じゃただのエロ」というラインで、解説しておけば、鼻から吸入する薬物をやってしまうと、粘膜が傷つき、鼻水や鼻血が出やすくなりますが、それにはまってしまったため、電車など公共の場所に行くことができなくなり、仕事をしに職場に行くと鼻血が頻繁に出てしまい、周りの人からは「エロ」だとからかわれる、という情景が、抜群のタイミングで挿入されています。一行で、このような情景をありありと、かつユーモラスに描いてしまうあたり、SEEDAの言葉の使い方の上手さが分かりますね。

リリックのすばらしさといえば、「SON GOTTA SEE TOMORROW」です。第一ヴァースでは売人を今日でやめる男、第二ヴァースでは上京し、東京で苦しみながら生きる女性を、それぞれの人物に寄り添って語っています。特に視点移動、時制の感覚が天才的で、昨日と明日、前と後ろといったものを語りの形式において移動しながら語ったり、東京で闇に近づく若い女性の心情を「タトゥーより深く落ちた街の影」と比喩と描写によって表現する際の歌詞の構成などはまさにリリシストとしか言い表せません。ちなみに、この曲のMV(前まで動画サイトにアップされていましたが、現在削除されているようです)に、警察官役でNORIKIYOが出演しています。ちなみに、楽曲内の語り手と、歌い手であるラッパーがおそらく同一人物でなく、かつ複数人の語り手が登場するという形式を取る楽曲の系譜がいくつかあるのでそれを紹介しておきましょう。Zeebra「I’m Still NO.1」、RHYMESTER「グッド・オールド・デイズ」、般若「やっちゃった」「FLY」、田我流「ハッピーライフ f/ QN, OMSB, MARIA of SIMI LAB」などがあり、最近ではCREEPY NUTS「みんなちがって、みんないい」が話題となりました。

また以上に紹介した楽曲の他にも『HEAVEN』には、日常を生きる苦しさを細々と描いた末、空に向かって「くそったれ」と叫ぶ呼吸の妙を見せる「空」、別れた女性の面影を煙のはかなさと重ねた「Mary Mary」などがあり、全ての楽曲が傑作である、完璧な一枚です。

 

TERIYAKI BEEF

ここで一度アルバムから離れてみましょう。2009年、VERBAL、RYO-ZILMARI、WIZE、NIGOがメンバーであるTERIYAKI BOYZのアルバム『SERIOUS JAPANESE』収録の表題作が問題を引き起こしました。フックの「おっと服に猿が付いてる」という部分、「気にせずサクサク仕事こなすハスラー 気になってるくせにコソコソ言ってる奴ら/君らみたいなのをヘイターと呼びます」というVERBALのライン、そして声が小さくて何と言っているのか判別できないアウトロ部分が、その原因でありました。つまり、「おっと服に猿が付いてる」というのは、メンバーのNIGOのファッションブランド、「ア・バッシング・エイプ」のことを指していますが、このラインは明らかに、すでに紹介しました「Sai Bai Man」の「おっと服に枝が付いてる」という歌詞を意識しており、またVERBALの歌詞は、ハスリングラップの代表者であるSEEDAを想起させてもおかしくありません。それに加えて彼らが、アウトロで「コソコソ」と言っていることを加えると、SEEDA及びOKIがこの「SERIOUS JAPANESE」を、彼らへのディスであると受け取っても不思議ではないのでした。

 そこで二人はYOUTUBE上に「TERIYAKI BEEF」という楽曲を発表し、TERIYAKI BOYZをディスしました。とても面白く、痛烈な曲でディスソングの歴史に名を連ねる有名な曲です。ちなみにこの曲で、OKIが「聞けるのはONLY カニエヴァース」と歌っていますが、これはTERIYAKI BOYZの「I STILL LOVE H.E.R  feat. KANYE WEST」という曲を指しているだろうと思われます。カニエ・ウェストというのはアメリカの、世界的に有名なラッパーで、これまた世界で一番有名だと言えるラッパーのJay-Zの裏方をやっていた経験があり、また自らの作品もきわめて音楽的に優れたものです。つまり、OKIは、世界的なアーティストと共演して喜んでいるかもしれないが、誰と共演しようがお前らのラップはダメで、カニエしか聞くところがないのだ、とディスをしているわけです。また、SEEDAは「般若にディスられSEEDAディスっちゃう?自分の都合で相手をかえちゃう」とディスをしていますが、これは、般若というラッパーが、「エイプをレイプするSHOWCASE 俺HIPHOPだからそれ当然」(「理由」)、「NIGOの倉庫にみんなで行こう PHARELLがいたら殴っていよう」(TWIGY「BOMB ON HILLS」)などの歌詞で、NIGOをディスしていたことを意識した言葉です。般若は元「般若」というグループをフィメールラッパーのRUMI、DJ BAKUと組んでおり、後に三軒茶屋を拠点とした妄走族を結成したラッパーで、現在『フリースタイルダンジョン』のラスボスを務めています。代表曲には「やっちゃった」「最ッ低のMC」「サイン」「はいしんだ feat. SAMI-T」などがあります。

その後、VERBALは自身のラジオ番組でSEEDAと一対一の話し合いを開きましたが、ラップで会話したかったというSEEDAに対して、日本でビーフを行うことの是非を議題にしようとするVERBALの話し合いはすれ違うばかりで、フリースタイルセッションでも、はかばかしい返答をしないVERBALに対し、SEEDAは「残念だよ」と小さく呟いたのでした。

BLOG上でSEEDAはこの件の終息を告げました。ラジオでの対談を聞いた限りでは、一貫してフリースタイルで、ラップで、話をしようとするSEEDAの方が格好良かったという人が多かったはずで、SEEDAの萎えた姿はかわいそうでもありました。またこれもおそらく多くの人が同じ意見であると思いますが、この件では、楽曲としての「TERIYAKI BEEF」の完成度、動画の面白さ、またラジオでのフリースタイルの腕前、それらの元にあるラッパーとしての姿勢(言葉に責任を持つこと等)の点で、BEEFと呼ぶにはすれ違っていたかもしれませんが、とりあえずはSEEDA(とOKI)の勝利であると言ってよいと思われます。ちなみに、この後OKIは、自らが話し合いに呼ばれていないことを不服とし、「SHALL WE BEEF」という曲を発表しましたが、返答されませんでした。

この件で日本語ラップシーンは大きく盛り上がりました。そこで、日本での創刊号を発売しようとしていた『THE SOURCE MAGAZINE』が、SEEDAに照り焼きバーガーを食べている姿での表紙を依頼するも、SEEDAは権威ある憧れの雑誌の表紙でそのようなことをしたくない/出来ないと断ります。ちなみに『THE SOURCE』はアメリカの権威あるヒップホップ雑誌で、作品の評価に厳しいことで有名であり最高点「五本マイク」を取ることができた作品はわずかしかありません。ちなみに、この雑誌とラッパーのEMINEMは犬猿の仲でした。そのことを聞いたGUINESSはYOUTUBE上に「SEEDA is Fake」という楽曲を発表し、SEEDAへのディスを宣言します。GUINESSは、フリースタイルダンジョンでお馴染みの漢がリーダーを務める新宿のグループMSCの周辺におり(一時期は所属もしていたようである)、BESとも近しいラッパーです。彼のディスは、自ら引き起こしたビーフに端を発した依頼を断るとは「芋引き」であるというもので、責任を取らないのはフェイクだ、という主張でした。ディスの内容が説得的だとは言い難く、また、この動画の最後にショッピングモールで「五歳のSEEDA君」と受付に呼び出しをさせていることなど、格好いいか、HIPHOPであるか、という点で問題があったと言えます。SEEDAは、アンサーを発表し、GUINESSも返答、再びSEEDAがアンサーし、このビーフは決着しました。結果はと言えば、SEEDAの圧勝でした。二曲のアンサーソングは今もYOUTUBEで聞けるので、是非聞いてみるとよいと思います。圧倒的なラップスキルに加え、ディスのセンスが抜群で、どちらの曲もとても笑わせてくれます。

このTERIYAKI事件から見えてくるのは、SEEDAのラッパーとしての覚悟、アンサーの素早さとラッパーとして真摯な対応、暴力、権力に屈せずに音楽の力を信じることなどです。SEEDAは二つの一連のビーフで圧倒的な勝利をおさめて、評価を上げました。おそらく、日本語ラップのビーフ史上最も鮮やかな勝利だと言うことができるでしょう。つまり、SEEDAは楽曲制作だけでなく、BEEFでも最強なのでした。

 日本語ラップにおける有名なビーフを紹介しておきましょう。キングギドラK DUB SHINEと、BUDDHA BRANDDEV LARGEのビーフがあります。K DUBの「バトルは俺が完全に食った」(「来たぜ」)という歌詞にDEVが怒り、ディスを発表した、という経緯でした。ちなみに、K DUB SHINEの有名な曲は「ラストエンペラー」「渋谷のドン」「オレはオレ」「狂気の桜」「今なら」「ソンはしないから聞いときな」などがあります。また、DEV LARGEはソロでの作品は少ないですが、ソロの代表曲には「MUSIC」という曲があります。また、変名DJ BOBO JAMES名義でのコンピ『HARD TO THE CORE』には、入手困難であった幻の曲「暴言」(有名な「証言」に、MSC韻踏合組合のメンバーらが乗せた曲)が収録されており、DEV LARGEの偉大なる功績の一つです。キングギドラの有名な曲は「大掃除」「見まわそう」「未確認飛行物体」「公開処刑」「F.F.B」「平成維新」「UNSTOPPABLE」「アポカリプスナウ」があります。BUDDHA BRANDは「人間発電所」「Don't Test da Master」「天運我にあり(撃つ用意)」「FUNKY METHODIST」「ブッダの休日」「ILL伝承者」などの曲があり、キングギドラもこちらも、とてもとても有名です。

 他には漢とDABOのビーフがあります。リアルを信条としていた漢は、DABOがアルバムのジャケットで銃を持っていること、車の免許を持っていないのにMVで車の運転をしていることなどから、フェイクであるとディスをしました。それにDABOは応答し、数曲に渡って両者のビーフは続けられました。漢の盟友であり、またDABOともつながりのある般若の取り持ちによって仲は修復されたらしく、二人はタッグを組んでMCバトル(「AsONE -RAP TAG MATCH- 20151230」)に出場もしました。ちなみに、漢はMSC、DABOはNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDの中心メンバーです。MSCは「音信不通」「宿ノ斜塔」「新宿 RUNNING DOGS」「六丁目団地」などの曲が有名で、ストリートのリアルにこだわったスタイルでシーンに衝撃を与えました。NMUは「NITRO MICROPHONE UNDERGROUND」「STRAIGHT FROM THE UNDERGROUND」「STILL SHININ'」などの曲が有名で、格好いいマイクリレースタイルでシーンを席巻しました。漢の有名な曲には、「何食わぬ顔してるならず者」「漢流の極論」「I'm a ¥ Plant」「光と影の街」「スキミング」などがあり、特にファーストアルバム『導』は、インディーズながら一万枚以上を売り上げたという伝説があります。DABOの有名な曲は「レクサスグッチ」「拍手喝采」「おはようジパング」「デッパツ進行」などがあり、フロウの上で日本語ラップに影響を与え、また独特な歌詞も評価を得ています。

他にもビーフはたくさんありますが、日本語ラップ三大ビーフは、この二つにTERIYAKI BEEFを加えたものではないでしょうか。最近では、2016年には、漢とKNZZのビーフが起き、殴り合いにまで至り、その光景がネットで共有され、大きな話題となりました。

 

SEEDA』 2009年

前作『HEAVEN』は、ストリートから、過去の自分からの脱出を試み、一種の集大成と言ってよい内容と、出来でした。続くこのアルバムでは、ラップスタイルにおいて大きな変化が見られます。それまでのSEEDAのラップの最大の特徴は、ビートが刻むリズムに対して完璧で「これしかない!」と、完全な必然性に導かれていると言いたくなるような、しかし同時に独創的でSEEDAにしか出来ないようなアプロ―チを見せることでした。また、彼のラップの魅力の一つに、言葉の発声、あるいは息継ぎの繊細さがあり、それらが強拍を打ち付けるタイミングの絶妙さと相まって、きびきびとした、緊密な、素晴らしいラップを作り上げてきました。しかし、今回の作品では、ジャストオンビートでしかラップをしないという方針を取ったと言います。その制約は、ラップの天才で変幻自在のリズムを作り出せる彼にとっては、ラップを簡単なものにしたようで、気楽さを感じさせます。しかし、そこで生まれたのは、これまでになかったような、柔らかなフロウで、余裕のあるタイム感に裏付けられたラップの乗り方でした。

 例えば、前作の延長にあるような見事な高速ラップを披露している「GET THE JOB DONE」に対し、例えば「FASHION」という曲でのフロウは、これまでのSEEDAになかったもので、かつてのような緊密なラップではないですが、とても気持ちの良いリズムを刻んでいます。

ちなみに、「GET THE JOB DONE」では、「fast flow 倍速」の掛け声を合図にラップの速度が急激に上がり、得意の高速フロウを披露していますが、この手の曲は他にもあります。緩急自在ラップの系譜と名付ければよいでしょうか。DABO「レクサスグッチ」、KREVA「中盤戦 feat. MUMMY-D」、OZROZAURUS「LOCK STAR」、NORIKIYO&OJIBAH「そりゃ無いよ feat. RUMI」のOJIBAH、また最近ではKID NATHAN「意識ハ冴エテ feat. Jinmenusagi」のジメサギ、般若「スゲートコ」などがあります。

 客演が豪華な一曲「GOD BLESS YOU KID」でも、SEEDAの新たなフロウが聞けますし、そこでは「SEEDA! 俺がFUTURE?オールドスクールなお前は見たことない俺」と歌っています。本当に新たな一面を見せつけてくれます。

 また、触れなければならない有名な楽曲が二つあります。一つ目は「DEAR JAPAN」です。これまで、自身の経験、心情などを歌ってきたSEEDAですが、この曲では、政治について歌っているのです。「俺はぶれない FUCK あっそう」(これは当時の麻生総理大臣についてのダブルミーニングですね)、またアメリカ初めての黒人の統領が誕生した時期でもあったので(知らない人がたくさんいそうなので一応言いますがHIPHOPはブラックミュージックです)、「不景気がなんだYES WE CANだ オバマと団結し向かう明日」と無邪気な言葉をこぼしてもいます。彼の政治への関わり方についてはいろいろと議論があるかもしれません。が、ここでは、ラップスタイルの変化とともに、リリックのテーマも変化し始めている、ということを指摘するにとどめておきます。ちなみにこの曲の「クラブのビーフはラップより喧嘩 ラジオのビーフはラップより大人」という歌詞はそれぞれ先に紹介したGUINESS、VERBALのことが意識されています。

もう一つの曲が、「HELL'S KITCHEN feat.サイプレス上野」です。この曲は、このアルバムの中で最も有名な曲ですし、SEEDAの代表曲の一つでもあります。これは社会や経済について歌った曲です。「いかれたオタクがMURDUR 田舎のギャル漁るプラダ TV付ければ捏造ばっか放送作家マスかくドラマ」という時事問題に触れる歌いだしから始まって、「ドラえもん もう見ない 飯島愛 見ることもない」といった固有名詞の多用など、当時の社会を映し出そうという意図があるかと思われます。これらが楽曲としての完成度を損なうように働いていることは間違いありませんが、一曲の意図を説明してしまうような最後の「これは時代を詰め込んだ BACK PACK RAP FRASH BACK RAP」という一節は、見事に歌われています。

このアルバムを発表後、SEEDAは裏方に回りたい、とラッパー引退を表明するのですが、半年ほどで復帰をしました。どのような心境であったのかは分かりませんが、このアルバムはSEEDAの新たな一歩であったということを考えれば、やはりまだまだラッパーとしてやり残したことがたくさんあったのです。

 

『BREATH』 2010年

前作『SEEDA』で、ラップスタイルにおいて大きな変化があったと言いました。この『BREATH』は、前部で19曲収録された大作で、前作でのアプローチをそのまま突き進め、かつトピックについてもそれぞれに深めたような一作で、後期(?)SEEDAの中でも高い完成度を誇る作品です。もちろん、大きなスタイルの変化から、賛否両論はあったようです。実を言えば、私もいまだに前期のラップの方が好きです。しかし、前作から続く彼の挑戦は、特に現在、再評価が行われるべきだとも思います。

この作品は海外のトラックメイカーの力を借り、世界最新の音楽を目指した作品です。ワールドワイドに動くSEEDAですが、ラップの内容も、グローバル化が進んでいた当時の社会を強く意識した曲が多く、トピックも多岐にわたり、前作から続く社会、政治、経済についての曲は前作に比べると構成などの点で進化、あるいは深化が見られます。少年時代を過ごしたロンドンでの思い出をつづる「FLAT LINE」、タクシーでの移動の速度感に乗せて「好きな日本を探す」一曲である「TAXI DRIVER」、多感な思春期を過ごした90年代を振り返る「BIX 90's」、資本主義の中での競争、国同士の戦争、環境汚染など世界中を支配する「弱肉強食」に対して愛と平和を対置した「ALIAN ME」などの曲があります。

特にラップが冴えている曲は、スムースなラップが心地よい「SET ME FREE」、「考えないフロウはアート 考えて書くリリックスはハート」というパンチラインが印象的な「THIS IS HOW WE DO IT」、既述のように、90年代を固有名詞を多用して振り返りながら「黄金年代」であったHIPHOPについてたどり着くまでの第三ヴァースがとても美しい「BIX 90'S」、これまではハスラーとして眺めていたSCARSの本拠地川崎を、工業都市として描いた「影絵(川崎~太田) feat. Bay4K」などがあります。ちなみに、川崎は現在とても注目を集めている場所です。磯部涼氏が『サイゾー』で連載中の「ルポ 川崎」がとても勉強になります。川崎について歌われた曲を挙げておきます。SCARS「MY BLOCK」、BAD HOP「CHAIN GANG」、KOWICHI「REP MY CITY」、MEWTANT HOMOSAPIENCE「KAWASAKI RELAX feat. YOSE」、PRIMAL「川崎 Back In The Day feat. bay4k」。

また、このアルバムで最も有名な曲は「WISDOM feat. ILL BOSTINO, EMI MARIA」でしょう。「MIC STORY」で共演した二人のラッパーに加えR&BシンガーのEMI MARIAを加えたこの曲は、オリコンにもチャートインしました。ちなみに、この曲でBOSSは「フレッシュさはメッシ スコセッシのような実績/併せ持つビンテージ MY KNOW THE LEDGE」と歌っていますが、これはアメリカのラッパーERIC.B&RAKIMの「JUICE(Konw the Ledge)」という曲を意識しているでしょう。ラキムは、HIPHOPの歌詞、フロウなどに多大なる影響を与え、HIPHOPの全盛期の一つ「ゴールデンエイジ」を代表するラッパーです。また、これも余談ですが、この「WISDOM」ののち、2012年にSEEDAとEMI MARIAは結婚することになります。

 

『23edge』 2012年

『BREATH』に続いて、メジャーレーベルであるEMIから出した『瞬間in the moment』発売後、わずか五か月ほどで発表されたのがこの作品。前作が多くの人に向けて開かれた、大まかにいえばメジャー向けの作品であったとすれば、今作は、そのような普遍性を保持しながら、よりラッパーSEEDAとしての側面が強い作品だと言えます。ハスラーとしてのきわめて個人的な感情、生活、光景などを歌ってきた前期、ストリートを抜け出し、社会や政治へと目を向けたあと、この作品でSEEDAは郊外での平凡な生活にたどり着いたのだと言うことができるかもしれません。ゲットマネーをこれまで歌ってきたSEEDAの、微妙だが重要な金銭感覚の変化が見られる曲として「小金持ち」、東京のリアルを描いた「TOKYO KIDS feat. BIG-T」、ここ数作で続いていた平和主義の標榜の系譜にあって「エジプトのピラミッド建てた頃から」など、そこに時間、歴史についての思考を付け加えて深みを出した名曲「LIVIN'」などが並んでいます。

 特に素晴らしいのはまず、一曲目の「BURBS」で、郊外の平凡な生活を滑らかなフロウで歌い上げるこの曲は、明確に「It ain't bout cash」「it ain't bout crazy」と、と歌われていますが、金や狂気(をもたらすものとしての麻薬や性)はかつてのSEEDAの中心的な主題でしたので、スタイルの変化がとてもよく表れた象徴的な一節だと思います。ハスラーの目まぐるしいスピードから一転、「ゆっくり時間が過ぎていく」様を、フロウで十分に表現しています。ここで明確になったのは〈ストリート〉から、彼が〈ロード〉を歌うようになったということでもあります。これまでも「山手通り feat.仙人掌」「道(23区) feat.MC漢」などの曲がありましたが、ここでの新境地は郊外に抜ける道路を、「追い越し車線」を使わずにゆっくりとドライブしてゆくような感覚だと言えばよいでしょうか。この「BURBS」では、国道「16号」「4号」「254号」線が出てきます。これは、東京の音楽、ということを模索したというSEEDAの試みの一つでしょう。

次に紹介したい曲は「PURPLE SKY」です。これは有名な曲です。「警察の親も息子も今日はsmoke together」「普段嫌いなあいつとも今日はsmoke together」と優しく歌います。「smoke」することで、かつては憎むべき敵であった警察とさえ、またアメリカの人々とさえ、煙を媒介にしてつながろうと呼びかける歌です。「みんなロボットに変わっても温かい心が俺には少しは必要/時計の針が壊れてくリズラ巻き戻そうとしても燃えてくいつも」という一節では、smokeするときの二つの動作、つまり巻くことと燃やすことが、時間を描く際にきわめて有効にはたらいており、リリシストぶりを発揮しています。ちなみに、このように葉っぱを吸うことについて歌う曲が日本語ラップにもたくさんあります。例を挙げるとすれば、YOU THE ROCK★「FUKUROU(YAKANHIKOU)」、BUDDHA BRANDブッダの休日」、妄走族大麻合掌」、MEGA-G feat. DOGMA「HIGH BRABD」、The タイマンチーズ「Ganja Ganja Ganja」などでしょうか。

そして、「How Far My Freind」です。ファンに向けてSEEDAが歌ってくれている曲です。「おしゃれしてくれた人も親の財布漁ってきたニート」でも、「必要とするなら」SEEDAはいつでも目の前に現れてくれると言います。そんな彼は「俺は一人じゃ意味ない」のであって、ファンのみんなが必要なのだと歌います。そんなやさしさに満ち溢れる一曲の中で最も美しいのは「天才勝てる時の努力家 ガキか大人の間小大人/山椒はぴりり辛いない愛想 正直と本音が幸せの才能」という一節です。繊細なリズム感と、後期(?)SEEDAに特有の滑らかな発音とフロウが一緒になっているのです。ちなみに、MVでは、待ち合わせに遅刻したSEEDAは、待ち合わせた人物にお詫びとして自販機で買った飲み物を渡して車に乗り込み、自分を「遅刻の王様」と言う映像がおさめられていますが、SEEDAの魅力的な人物像が見える映像です。みなさんもSEEDAのファンになって「ぷぷぷぷぷ」と笑いましょう。

 

さて、これまで主要なSEEDAのアルバムを挙げていきました。他には、激レアであるファーストアルバム『DETNATOR』(私も聞いたことがありません。再発を切に願うのみです)、『Green』と合わせて聞きたいセカンドアルバム『ILLVIBES』、また詳しくは触れていませんが、評価の低い『瞬間in the moment』があり、また、SCARS名義でのアルバムもあります。また、2016年、CPFで発売した会員400人限定の『8 SEEDS』もあります(私は会員になっていなかったので聞けていませんが)。そこで、上記のアルバム以外での、客演仕事などを中心に聞くべき曲をリストアップしていきます。

 

「FACT」 SEEDA BES 仙人掌 (『CONCRETE GREEN3』または『CONCRETE GREEN/WHITE CHRISTMAS』)

この曲は、日本語ラップの歴史に残る一曲です。BACH LOGICがトラックを担当していますが、彼の全仕事の中でも屈指の出来のこの曲に、SEEDA、BES、仙人掌の三人もまた彼らのキャリアの中でも最も素晴らしいラップを乗せており、日本語ラップ史上最も優れた曲の一つです。間違いなくこの曲は大傑作です。全ての言葉がパンチラインで、また、本当に独創的で、奇跡的なフロウのラップを聞かせてくれます。残念なことに、この曲が収録されているCDも廃盤で、まことに日本語ラップにとって大きな損失であると思います。大きな声では言えませんが、ネット上を探してみるとよいかと思います。 

ちなみに、仙人掌のことを知っているでしょうか?彼はMONJUというグループのラッパーです。MONJUは、仙人掌のほかに2016年、KOKの予選でのT-PABLOWとのバトルが話題となったISSUGI、またMr. PUGからなるグループです。クールなラップがとてもオシャレで格好いいグループで、昔から東京のアンダーグラウンドで活躍していました。また、2016年にはGRADIS NICE & ISSUGI『DAY and NITE』、仙人掌『VOICE』が発売され、比較的高い評価を得ているようです。ちなみに、彼らが所属するDOWN NORTH CAMPには他に、S.L.A.C.K、KID FRESINO、BUDAMUNKなどが所属しており、東京のアンダーグラウンドHIPHOPを支えてきました。またちなみに、仙人掌の「VOICE」という曲では、「売れたくなくても曲メイクしまくりな ペンが走らなきゃフリースタイルで突破」と歌われていますが、これは後で紹介するSCARS「COME BACK」のSEEDAの有名なパンチラインのサンプリングです。

I-DeA「Walk wit me feat. SEEDA」(『SELF EXPRESSION』)

SCARSでの活躍をはじめ、日本で最も優れたトラックメイカーの一人であるI-DeAのアルバムに収録されたこの曲は、とてもリリカルなラブソングです。第一ヴァースではほぼ全編英語でのラップを披露し、第二ヴァースでは日本語でラップをしています。何といっても流れるようなフロウと、感動的な歌詞が素晴らしく、聞いた人は、必ず涙を流すことでしょう。また、フックの三連符のリズムが非常に特徴的で美しいです。ちなみに、三連符は、トラップに多いスタイルですが(二拍三連符)、日本の(というよりもすでに世界の、と言えるかもしれませんが)トラップの代表者と言えばKOHHがいます。KOHHは、大傑作アルバム『DIRT』があり、曲単位では「FUCK SWAG」「貧乏なんて気にしない」「DIRT BOYS feat. Dutch Montana, Loota」「飛行機」などの代表作があります。

SWANKY SWIPE「PLAYER'S DRIVE feat. SEEDA & A-THUG」(『BUNKS MARMARED』)

SCARSのBESが所属するSWANKY SWIPEと、SCARSの二人のコラボレイト。格好いいビートの上でSEEDAがとにかくぶちかましています。「ダチのダチじゃ誰お前マジで知らねーどっか行け」「何が言いてえんだかさっぱり分からねーラッパーがいる」といった超パンチラインを残しています。

また、この時のBESは恐ろしいほどキレキレです。また、おそらくこの時期のBESのフロウに影響を受けているのが、クラシック「小名浜」で有名な鬼でしょう。BESとは違い韻が固いラッパーですが、フロウの面ではこの時のBESからの影響は確かにあるかと思います。鬼と彼の仲間、鬼一家の『赤落』というアルバムが有名です。BESは鬼の「ontime07」、「糸」などの曲に客演しています。特に「糸」は名曲で有名な曲です。

 L-VOKAL「What's UP feat. SEEDA, Bay4K, STICKY」(『摩天楼』)

SEEDAの盟友と言ってもよいL-VOKAL。とにかくこの難しいビートに完璧に乗せて、かつまだ見たことない動きを編み出してしまったL-VOKALとSEEDAのラップの上手さが圧巻です。「ハスラーならてめえの力で何か掴んでから名乗りな」!SEEDAのこの歌いだしだけでも、聞く価値が十分にあります。しかし、『CONCRETE GREEN』と同様、超レア盤かつ超名盤ミックスシリーズ『摩天楼』の特典音源のため、手に入れることがとても難しいのです。i-tunesにこの作品は入っているようですが、特典のこの曲はそこでは聞けないです。これも中古か動画サイトを探してみるしかないでしょう。L-VOKALはスムースなラップが特徴的なラッパーで、歌詞も非常にシニカルで面白いです。ファーストアルバム『Laughin'』で名をあげ、KREVAの全面プロデュース作品『別人Lボーカル』(このアルバム名はKREVAのファーストソロアルバム『新人KREVA』を意識しています)も話題となりました。 

NORIKIYO「REASON IS...... feat. SEEDA」(『OUTLET BLUES』)

 SCARSとSD JUNKSTAという日本最高のヒップホップグループのスター二人の共演した曲です。「日本語ラップぶっちゃけ興味もないわ」と本音を暴露しつつ、音楽と自由の問題について、独特の論理的な装いの歌詞の運びと、詩的な連想、隠喩などが奇妙な仕方で混じり合った素晴らしい歌詞で語っています。「馴れ合いが体制なら俺は犯罪」。

ちなみに、NORIKIYO、ひいてはSD JUNKSTAのことは知っていますでしょうか。NORIKIYOはSD JUNKSTAのリーダーで、素晴らしい歌詞と裏のリズムが独特で魅力的な、日本を代表するラッパーの一人です。彼は昔悪いことをしていて追われ、逃げるためにビルから飛び降りて足に不自由を持つようになった、という話はとてもとても有名なです。彼の代表作は新たなリリシズムでシーンに衝撃を与えた『EXIT』や、『OUTLET BLUES』、『メランコリック現代』などがあります。曲単位では、「DO MY THING」「2FACE feat.BES」「支払は満額で (feat. BRON-K & OJIBAH)」「秘密」などはとても有名なクラシックです。

また、相模原で結成されたSD JUNKSTAは、とても魅力的なHIPHOPクルーです。アルバム『GO ACROSS THA GAMI RIVER』『OVERDOSE NIPPON』はどちらもとても素晴らしいアルバムで有名です。仲のよさと楽しいノリが日本で最も良質のクルー感を醸しだす「レイノヤツ~SAG DOWN PARTY~」「飲む」はSDの魅力を伝えてくれると思いますし、「人間交差点~風の街~」は風の街で生きる彼らの想いを歌っており、とても有名で彼らの代表曲でしょう。

SCARS「COME BACK」(『NEXT EPISODE』)

ファーストアルバムで歴史に名を残すことを約束されたSCARSが戻ってきたことを高らかに告げる一曲で、SEEDAは先に述べたように「売れたくないなら無料でやりな ペンが走らなきゃカラオケ行きな/SCARSを歌いな 乗り移る川崎東京が」という有名なパンチラインを残しています。他のメンバーのヴァースも全て格好いいです。また、先に仙人掌がこのパンチラインを引用したことを紹介しましたが、他にBESの「YUME TO KANE feat. SEEDA」という曲でも、「ペンが走らなきゃ俺はただのクズ」と引用されています。

「ONE WAY LOVE feat. BRON-K」(同上)

SEEDASD JUNKSTAが誇るBRON-Kが共演した、リリカルなラブソングです。歌ものラップで、素晴らしい一曲です。「記憶の断片が 消えてくONE WAY LOVE」。

ちなみに、BRON-Kというラッパーもまたラップの天才です。おそらくSD JUNKSTAの中ではNORIKIYOに次いで人気のあるラッパーではないでしょうか『奇妙頂礼相模富士』は特に名盤で、特に「ROMANTIC CITY」「何ひとつ失わず」といった曲はとても有名な傑作なので聞いていなければなりません。また、客演仕事も多く、名フックをたくさん歌っています。

MICROPHONE PAGER「MP5000FT feat. ANARCHY, SEEDA」(『王道楽土』)

格好いいビートの上で、全員が格好いいラップをかましています。SEEDAの、「ノールックでブザービーター ONE TAKE BLAH ONE SHOT KILLAR」という部分はとにかく格好いいパンチラインです。

ちなみにMICROPHONE PAGERとは、〈KING OG DIGGIN'〉ことMUROと、天才TWIGYのユニットで、1995年の『DON'T TURN OFF YOUR LIGHT』というアルバムはクラシックで、多くのラッパーに影響を与えました。特に「病む街」という曲が有名です。

「GOOD BOY, BAD BOY feat. SEEDA, KREVA」(『くレーベルコンピ【其の五】その後は吾郎の五曲』)

SEEDAKREVAが共演した曲として「TECHNIC」をすでに紹介していますが、この曲もまた名曲だと言われています。「GOOD BOY」的なKREVAと「BAD BOY」的なSEEDAの二人の共演はやはり間違いがないのです。ちなみにKREVAというのは元はCUE ZEROというラッパーとBY PHER THE DOPESTというユニットを組んでおり、90年代からアングラな場所でラッパーとしてのキャリアを積んでいました。当時を知る人から聞く限りでは、凄いラッパーが現れたぞ、と評判であったともいいます。その後LITTLE、MCUとともにKICK THE CAN CREWを結成し、人気アーティストとなり、紅白歌合戦にも出場しています。有名な曲には「マルシェ」「イツナロウバ」「アンバランス」などがありますが、アルバムとしては『GOOD MUSIC』が評価の高い作品です。またソロでのKREVAも素晴らしい楽曲を多数残しており、「音色」「アグレッシ部」「イッサイガッサイ」「THE SHOW」「挑め」「基準」「OH YEAH」などが有名です。またアルバムとしては『心臓』が最も完成度が高いです。

またこの曲が収録されているアルバムの名前にある、熊井吾郎はKREVAのバックDJを務め、日本有数のMPCプレイヤーで、日本一に輝いたこともあります。MPCプレイヤーと言えば、ニューヨークの路上でのプレイをおさめた動画で有名になったSTUTSの、2016年発売のアルバム『Pushin'』は非常に好評を博しました。特に、PUNPEEとの「夜を使い果たして」は、2016年最高の曲に推す声が多く聞かれます。

SCARS「GUTS EATER feat.DEN G.P.S」(『THE EP』)

「時にはメンバーの半分が不在」の状態にまで追い詰められたSCARSですが、SEEDAを中心にSCARSを機動させて作ったEPです。SEEDAはこれまでになかったような発声とフロウを聞かせてくれ、やはり天才であると再確認させてくれます。不在のメンバーへの想いを歌っており、「BESフロウ飛ばす A-THUGのアティチュード いかれたバース小節にチャンス」という歌詞は仲間への愛を感じさせてくれ、とても胸が熱くなります。また、この曲のSEEDAは数多くの引用をしています。自分の曲や、SCARSのメンバーのパンチラインからの引用です。ここでそれを全て解説することは野暮ですのでしませんが、「MONEY, PAIN 切れないチェーン 二つの狭間不条理なゲーム」という一節は、すでに紹介したBESのパンチライン「結局MONEY, PAIN 切れないチェーン 煙の向こう終わらないゲーム」からの引用です。仲間への想いがとても感動的に歌われていて、かつとても格好いいです。ちなみにA-THUGのことをまだ紹介していませんでしたが、彼はSCARSのリーダーです。時に笑ってしまうような、めちゃくちゃな歌詞を歌っており、それがとても魅力であるとも言えます。また、トラップミュージックの隆盛以降、下手くそだとの声も多くあった彼のラップは最近以前よりも活力を増していると言えそうです。A-THUGは日本有数のパンチラインメイカーであり、最も有名な「Bloodsとつるみ Crackを作り Blockを仕切り Glockを握り」(「Pain time」「塀の中」)というものがあります。アメリカの恐ろしいギャングとつるみ、コカインを作り、街の一角を仕切るハスラーのリーダーであり、拳銃を握るのだという意味で、非常に恐ろしい、強烈なパンチラインです。2016年に発表されたDOGGIESの「DOGIES GANG」(KNZZ & A-THUG)の「雹と雪が降る 野菜を食べる」という歌詞も、とても危ない半端ではないパンチラインだと言えます。

また、A-THUGと同タイプのパンチラインメイカーには、T.O.P.がいます。特に「4 My Thugz」という曲は、すべての歌詞がパンチラインだと言え、あまりの規格外さに抱腹絶倒するしかない、といった曲です。「ギャングみたいに通りに溜まって ラスタみたくKushでキマって/ワックな奴めがけてRhyme飛ばす Bitchが口ずさむバースぶちかます」「仲間とつるんで 仲間と溜まって 仲間と吸って 仲間と歌って 仲間のために暴れJailに入る」「Chickを回してDickを突っ込む」などの歌詞があります。

MAJOR MUSIC「HOPE」

この曲は、3.11に際して、MEJOR MUSIC、SEEDAKREVAが中心となって動いたチャリティソングです。 KREVA後藤正文ASIAN KUNG-FU GENERATION)、Mummy-DRHYMESTER)、宇多丸RHYMESTER)、三浦大知SEEDA、EMI MARIA、KOJOE、lecca、TENZAN、MAJOR MUSIC(Bastiany&HirOshima)、Che'Nelle(US)、Karibel(US)が参加しています。日本と世界、ヒップホップと多ジャンル、東京と地方などが垣根を超えて力を合わせることの重要性を体現しているメンツではないでしょうか。

ちなみに、震災に際して多くのラッパーたちが声を上げました。GAGLE「うぶごえ」、楽団ひとり「NORTH EAST COMPLEX part 3.11」、S.L.A.C.K、TAMU、PUNPEE、仙人掌「But this is way」、般若「何も出来ねえけど」などの曲があります。

 

SEEDA Junkman kZm「BUSSIN」

ここ最近、シーンの中心に躍り出たYENTOWNの中心人物Junkmanと、kZm、そしてSEEDAが共演したこの一曲を聞いた人たちはとても驚きました。なぜなら、久しぶりにSEEDAがストリート感を取り戻し、キレキレのラップを披露しているからです。まず一言目でぶちのめされてしまいます。「I'm motherfuckin' SEEDA」ですし、続けて「排水溝のなーーか」です。本当に度肝を抜かされてしまいます。説明する必要があるでしょうか?フリースタイルダンジョンのライブでも「俺はストリートの代弁者」と、素晴らしいセリフを吐いてからこの曲を歌い始めましたよね。

また、Junkmanのヴァースも素晴らしいです。「いかれててもイケてりゃいいってこったな 嘘はめくられるストリートこっから」というのはパンチラインです。

YENTOWNは今とても人気が出はじめていて、危ないにおいを感じさせる、とても格好いいグループです。主要メンバーのMONY、PETZ、JNKMN(Junkman)で出したEP『上』『下』は最近のヒット作だと言えます。

 

他にSEEDAに関連して、聞いておくべきだと思われるアルバムをリストアップしておきます。

『SCARS PRESENTS: MIXED BY DJ TY-KOH』 CCG収録の曲などが収録されており、SCARS入門に手っ取り早いミックスCDと思われます。ミックスを手掛けたDJ TY-KOHは川崎出身で、SEEDAのライブのバックDJを何度も務めています。彼の主宰するFLY BOY RECORDも今活発に動いており、「バイトしない」は名曲だと言う人が少なからずいます。

SEEDA・OHLD・BRON-K『DESERT RIVER』

すでに紹介している二人に加え、素晴らしいプロデューサーであるOHLDが組んだのがこの「DESERT RIVER」プロジェクトです。非常に格好いい音に、二人のラッパーがラップを乗せています。このアルバムに収録されている以外にも、DESERT RIVERシリーズの曲はあります。また、SEEDAはこれと同時期にS.L.A.C.K、Zeebraとシングル『WHITE OUT』も発表しています。

SEEDA, DJ ISSO, DJ KENN『CONCRETE GREEN   THE CHICAGO ALLIANCE』

SEEDA、DJ ISSOに加え、アメリカ、シカゴのハードな環境で生き抜くDJ KENNを迎えた一枚。DJ KENNは、世界的ラップスターであるチーフ・キーフとも親交が深い人物です。サウスと川崎が手を組んだ一枚となりました。また、PUNPEE「憧れのCONCRETE GREEN」を聞くと、CCGがいかに日本語ラップ界で権威があり、大きな貢献をしてきたかが分かります。P様でさえ、ド緊張してしまうのがCCGなのです。ちなみに、PUNPEEは弟S.L.A.C.K、同級生GAPPAERとユニットPSGを結成し、アルバム『DAVID』で絶大な評価を得ました。パンピーどころでなく天才との評価は揺るぎないものの、ソロでの仕事のほとんどがプロデュース、ミックス、客演などでまとまった音源はいまだ発売されておらず、多くの人がソロアルバムを待ち望んでいます。

I-DEA『SELF EXPRESSION』 SCARSのトラックメイカーI-DeAのアルバム。SEEDAは二曲参加。また、SWANKY SWIPE「評決のとき」のオリジナル「ONE DAY」も収録。ちなみにI-DeAのレコーディングは非常にストイックで、「I-DeA塾」と呼ばれています。

STICKY『Where's My Money』 SCARSのSTICKYのソロ。SEEDAも一曲客演参加。

bay4k『I AM...』 SCARS、練マザファッカーのbay4kのソロ。SEEDAも一曲参加。ちなみにbay4kは、ダウンタウンが司会を務めていたかつての大人気バラエティ番組『リンカーン』の企画「ウルリン滞在記」に練マザファッカーのメンバーとして出演しました。リーダーD.Oの「いいぜメーン」が流行語となりましたが、二番手的な立ち位置のbay4kをはじめてとしてメンバーたちが口にする「ディスってんの?」も流行し、現在では一般的な言葉として定着しています。

 BES『UNTITLED』 捕まっていたBESだが、敏腕318の指揮の元、仲間たちが力を合わせて完成させたBESの最新アルバム。SEEDAは二曲参加。

SAC『FEEl OR BEEF』 SCARSのトラックメイカーSACのアルバム。SEEDAは二曲参加。SCARS、SDの面々の他に神戸薔薇尻、鬼なども参加しています。SCARS『THE ALBUM』の「In Dro」のリミックスも収録。

DJ MUNARI『THE ALBUM』 HIPHOPの本場ニューヨークに渡り「下剋上」を試みたDJ MUNARI(A-THUGによれば「無也 無から有を生むなり」!)だからこそ実現した名盤であり、SEEDAは二曲参加。アメリカ、ギャングスタラップの大御所KOOL G RAPと、日本の般若が夢の共演を果たした「DEAD OR ALIVE」も収録。

『BOOTSTREET PRESENTS : Rapsta On Bootstreet』 JASHWONとD.OのBOOT STREETが手を組んで作られたコンピ。SEEDAは一曲参加。BOOT STREETはかつて、渋谷に店を構えていたショップで、とても有名であった。多くのMVにも映っている。SEEDAの「SHIBUYA SHIBUYA feat. bay4k」のMVに映っているように、かつて渋谷のHIPHOPの象徴の一つでありました。

マイクアキラ『THEラップアイドル』 SEEDAは一曲客演参加。マイクアキラは四街道ネイチャーのメンバーで、本当にいかれています(もちろん褒め言葉です)。四街道ネイチャーは、伝説的な二つのイベント、さんピンCAMPと大LB祭りのどちらにも参加した唯一のアーティストです。アルバム『V.I.C. TOMORROW』があります。

Squash Squad『Objet』 SEEDAは数えきれないほどのアーティストをフックアップしてきましたが、その一組にSquash Squadがいます。独自の世界観を持っているアーティストです。SEEDAも一曲参加。ちなみにメンバーのVITO FACCASIOは2016年、フリーミックステープ『Rehabilitation』を発表しました。

VIKN『CAPITAL』 ストリートヒップホップの重要な担い手であるVIKNのアルバム。SEEDAも一曲参加。また、「STARTING 5 feat. BES, GUINESS, A-THUG & NIPPS」は多くのリミックスを生みヒットしました。

SMITH-CN『yumenokakera』 引退宣言後のSEEDAがA&Rを務めたSMITH-CNのファーストソロアルバム。SMIITH-CNはSNIPEとEESENCIALを結成していたラッパーで、後にR-RATEDに所属します。特典CD-Rとして限定配布された「2010 feat. SEEDA」は今となっては手に入れることが難しいですが名曲です。

OKI from GEEK『ABOUT』 「Sai Bai Man」やCCGへの参加、TERIYAKI BEEFなどで知られるOKIのファーストソロ。SEEDAは一曲参加。「四畳半劇場 feat. NORIKIYO」などの名曲も収録。